業界の古い慣習などを敵にする作戦です
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昨日に引き続きワックス。
これだけ暑い中でワクシングをすると自分の汗がだらだらと滑走面に落ちる。
塩分がワックスと混じり滑走面に吸収されるのだ。
アイロンをかければ「ブチブチ」小気味よい音をたててワックスとぼくの汗が融合していく。
これは走る(確信)
今日はDEATH SERIESを中心にワックスをかけた。
DEATH LABELのラインナップ上、愛してやまないモデルだ。
そしてワックスは殺人的な速さを作り出すDOMINATORワックス。
その開発者(アメリカの偉大な博士)たるや超ど級の変態なのだろう。
なにせその走りすぎるワックスは、時として人を狂わせるのだ。
・・・
とある大会(ジャンプ)で雪のコンディションが非常によろしくなかった時、ぼくはアプローチ(助走)の距離に迷っていた。
前日の湿雪からいきなりの晴天。
ノリみたいな一番走りにくい雪。
他のライダー達は十分なスピードを得られず、デコ落ち(落ちると大変痛い平らな場所)する人も多かった。
大柄な自分は皆と同じくらいの地点から行けば飛びすぎる。
そしてなぜか自分の板は異常に走っていた。
怖いほどである。
DEATH SERIESに採用されているNANO HIGH SPEEDという最高に走る滑走面もそうだが、ワックスががっちり合っていたとしか思えない。
そういったわけでこの時はアプローチを皆さんの1/3くらいにしてスタートした。
周りから見たら絶対に足らないだろうと思われるような。
1本目のジャンプである。
そんな短いアプローチの中にさらにチェック(ちょっとした減速)を入れつつテイクオフに向かう。
だがしかし、テイクオフ(飛び立つ)寸前にこれまでの経験から、
「早すぎる」
「抑えねば」
「でも飛びすぎることは決して悪いことじゃない」
一瞬の中にめくるめく思いがあったけれど、どのみち減速したところで間に合わない。
いつもどおり飛んだ。
過ちだった。
キッカーは16メートルだったから安全圏は17~20メートル。
それを飛び越したぼくはランディングバーン(着地するのに適した傾斜地)でなくフラットへ着地。
着地した刹那、「ボキャリ」と重いながら小気味よい音がした。
幾多の骨折経験からして間違いなく太めの骨が折れたことを理解した。
あとで気付いたことだがFLUX(ビンディング)のベースプレートも破壊していた。
しかしながらテイクオフをミスったわけではないし物凄く綺麗に着地していた。
転倒でもしていればそのまま棄権でもしていたかもしれないが、着地してしまったためにアドレナリンを噴出したのだろう。
そういった時の人間というのはすこし頭がおかしくなるようだ。
あろうことかぼくはそのまま60分の間、飛び続けたのだ。
今思えば阿呆だ。
あえて言い訳をするなれば、プロたるものひとつの大怪我をしてしまえばそのシーズンは終わる。
「怪我」は「今季の活動の終わり」を意味する。
今シーズン最後の大会で飛べるだけ飛んでおきたいと思ってしまったのだ。
ともかく、飛び続け予選を終了し板を抜いた。
歩くことはおろか立つこともできない状態だった。
予想以上の酷さ。
当時、現場に来ていたDEATH LABELの社長(大規模な試乗会も兼ねていたから)が仕事を中断し、パトロールとキャット(圧雪車)を手配してくれ、ダッシュで助けてくれたのは言葉にはできない感謝だ。
しかも人知れず。
ぼくの心境としては怪我をしたことを周りに知られたくないものである。
そんな馬鹿を何も言わず助けてくれた。
話は逸れたうえに長くなってしまったが、それほどまでに走るワックスなのだ。
ドミネーターワックス。
恐るべし。
反省。
そんな思いを馳せながら今日もワックス作業に勤しんだのだった。
※オーバースピードは決してワックスのせいではありません。
ぼくのミスであることを断言します。
近藤勇二郎